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Tuesday, May 01, 2012

福島甲状腺検査その2: 比較調査の必要性

福島県子どもの甲状腺検査結果についての松崎医師の見解、 福島県甲状腺検査、35%が「5ミリ以下の結節、20ミリ以下の嚢胞」-ゴメリ以上の甲状腺異常の可能性まだの方はまずこちらから読んでくださいがアクセスを集めていますが、福島の検査を率いている山下俊一氏らが2001年に日本内分泌学会の Endocrine Journal というジャーナルに発表した:

Urinarine Iodine Levels and Thyroid Diseases in Children; Comparison between Nagasaki and Chernobyl (「子どもの尿中ヨウ素のレベルと甲状腺の病気-長崎とチェルノブイリの比較」)

という論文が「内部被曝研究会」でも話題になっているそうです。この長崎の調査が日本の子どもたちの「平時」の甲状腺異常の目安になるのならば、「意識屋のブログ」にあるように、「250人中、Goiter(甲状腺全体の腫大のみ)=4人、5mm 以上の結節=0人、癌=0人、のう胞様変性(cystic degeneration)と単発の甲状腺のう胞(single thyroid cyst)=2人という結果」であり、福島では35%以上にのう胞が確認されたのに長崎では0.8%であったことから、「この歴然たる差を知りながら、山下氏らの調査ではそのことに一切触れていません。癌であるかないか以前に、福島県の子どもたちの甲状腺の状態は明らかに異常なのです!」との所感には同意します。

と同時に、素人ながら、この調査のデザイン自体もおかしいのではないか、と私には思えます。この調査は、ベラルーシ・ゴメリではチェルノブイリ事故前よりも甲状腺ガンが100倍も増えていると言いながら、ゴメリの子どものヨウ素摂取量が長崎に比べて低いことを示し、甲状腺障害の頻度をそのことと関連づけようとしています。しかし、ヨウ素摂取量の違いによる甲状腺異常の比較をしたいのならチェルノブイリ原発事故の影響を受けた地域と比べるべきではなく、ヨウ素摂取量の低い場所の「平時」のデータと比べるべきと思います。ゴメリの子どもたちの甲状腺異常のどこまでがチェルノブイリ事故によるものなのか、ヨウ素不足によるものなのかがわからないからです。逆に、原発事故による放射性物質が与える健康影響がヨウ素摂取量にどう影響するのかを調べたいのなら、チェルノブイリ事故に同じぐらい影響されていてかつ、ヨウ素摂取量の多い地域を選ぶべきで、「平時」の長崎と比べることによってはわかりません。勘繰りかもしれませんが、この調査は、チェルノブイリ事故の影響と思われる症状がヨウ素摂取不足によるものだと説明したいがために行ったのではないかと感じてしまいます。

この論文を送ったところ、松崎医師からまたコメントをいただきましたのでここに公表します。

★☆★☆★☆
(松崎医師引用始め)
ご紹介いただいた文献と今回の福島調査結果について私が感じたことを述べます。これは、日本の意欲ある医師からの要請に応えた返信です。拡散の意義があると考えましたので、お知らせ申し上げます。
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1.今回の福島の健康管理調査で18才以下の集団の35%に超音波検査(US)で甲状腺のう胞が見つかったという所見は「ナゾ」です。

【参考文献1】http://jama.ama-assn.org/content/268/5/616.full.pdf+html

JAMAチェルノ高汚染地域vs低汚染地域の住民比較調査。US検診時5、10才児、40才、60才の4集団。USで結節(のう胞を含む)が見つかったのは5,10才児集団でそれぞれ居住地域に関わりなく1%以下。(US診断基準:直径5ミリ以上のnoduleであること。Nodulesをさらに 充実性とのう胞性に分類)放射能汚染による差が出なかったのは、甲状腺に被ばくの影響が出るのが5年以上経ってからだと言う過去の知見があるから不思議ではない、と述べている。

【参考文献2】
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00198/contents/012.htm

(これは山下氏の論文の元になった日本財団の調査:チェルノブイリ原発事故被災児検診成績チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト1991-1996より「放射線科学 第42巻第10号-12号(1999年9月-11月)掲載)「図11 甲状腺超音波診断画像異常所見発見頻度(%)の年次推移(1991~1996)」を見ると、チェルノの17才児までの検診では、甲状腺のう胞の出現率は結節性病変と同じくらい(約0.5%)である。
以上から、チェルノブイリ事故後の高汚染地域でも低汚染地域でも、事故の数年後から10数年後に至るまで、「甲状腺のう胞」が福島のように高率にUSで検出されていないことがわかります。

その理由は、甲状腺USの装置と診断技術の違いなのか(US装置は外国の調査でも日本の製品が使われていることが多いようですが)?日本人に特有な所見なのか?そして、今回の福島事故に特有な所見なのか?

⇒結論として、
したがって、日本の別の地域でコントロールを設定した調査を行うことが重要だと思います。

その際必要な条件に付いて述べます。

日本の他の地域でcontrol群を設定して甲状腺のUS所見を調べる上で必要なことは、

【1】福島調査と同じ年齢分布(平均年令も含め)の集団を設定することがいちばん重要です。甲状腺の形態学的変化はゼロ歳から17才まで急速に増加しますので、平均年齢が2,3才違っても、データの解釈が難しくなります。福島調査では0才~、6才~、11才~、16才~18才という区分けでそれぞれの人数が示されていますので、同じ分布になるように対象を選ぶ必要があるでしょう。

【2】次に大事なことは、超音波検査を実際に行う方のスキルが高いことおよび、検査時の条件設定を固定する事だろうと思います。スキルがプアなので検出率が低いとか、検出率が低くなるように測定条件を操作したとの非難を避けるためです。

【3】年齢分布がおなじであれば、年齢階層順に50、50,50,30名ずつ検診を行えば、甲状腺のう胞が35%という数字が福島特有の現象かどうかの判断がつくと思います。なるべく福島原発周辺地域と似た社会経済状態で、ヨード欠乏もなさそうな(海産物を良く食べる)地域を選ぶのがよいと思います。以上の調査結果は、(期待する調査結果の有無にかかわらず)査読のある専門雑誌に掲載されれば、素晴らしいエビデンスとなるでしょう。
(松崎医師引用終わり)

このような調査を行う必要性に同感します。@PeacePhilosophy

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